「日本で唯一の饅頭(まんじゅう)神社」ともいわれる「林(りん)神社」(奈良市漢国町)で、林浄因(りん じょういん)の命日とされる4月19日に「饅頭祭り」が行われた。今年は悪疫退散祈願も併せて執り行われた。
林神社はまんじゅうの祖と言われる林浄因を祭り、祠(ほこら)は漢國(かんごう)神社の一角に建立されている。同祭りでは林家の末裔である塩瀬総本家をはじめ、地元奈良・大阪・京都や、全国各地の菓子業界がまんじゅうを奉納し、業界の繁栄を祈願する。例年は各地から多くの参拝者が集まるが、今年の参列者は関係者30人ほどで、神職以外はマスクを着用し、随所でソーシャルディスタンスを意識して行われた。
梅木春興宮司は「今や全世界的な危機的状況の中、わが国においては菓業界のみならず多くの業界で経営破綻が取り沙汰され不安と焦燥の今日、一刻も早いコロナの終息がかなわなければ、生活そのものが立ち行かないと危惧し悪疫退散祈願も行った」と話す。
参列した大阪経済法科大学客員教授の村内俊雄さん(68)は「今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、恒例の饅頭の振る舞いや呈茶、奏楽奉納も取りやめとなった。境内に人が溢れんばかりのいつもの饅頭祭りとは打って変わり、静かで簡素な祭りとなり寂しい」と境内を見つめる。
梅木宮司は「地域の、そしてより広範な人々の、心のよりどころとして神社の果たす今日的な役割とは何かを、今改めて考えさせられる」と思いを込めた。