今年も東大寺(奈良市雑司町)お水取りの「お松明(たいまつ)」に使われる竹の奉納行事「竹送り」が始まり、2月10日に市内のグループによる奉納が行われた。
奈良に春を呼ぶ行事といわれる「東大寺二月堂 修二会(お水取り)」は、752年に始まってから一度も途絶えることなく続き、今年で1268回目を数える。本行の3月1日~14日、二月堂の舞台に毎晩上がる燃え盛る勇壮な炎の「お松明」はよく知られるが、これらはさまざまな人の支えで準備されている。
お松明に使われる竹は、曲がりの無い長さ6~8メートル、周囲30センチほどの太いものが計141本必要。長さと重量があるので操る際にバランスを取るため根付きの竹が必要で、重さは20~30キロにもなる。毎年、各地の講などによって奉納される。
当日奉納した、東大寺にほど近い般若寺町の岡本三好さん(77)ら30人のグループは、奈良市大柳生町の竹林から掘り出した竹17本をトラックで東大寺に運び、鐘楼(大鐘)の前から二月堂前まで台車に載せ、最後は肩に担いで奉納した。
岡本さんは親の代まで竹屋だったことから毎年奉納を続けている。「竹の奉納は『お水取りの準備に関われるのがすごい。ぜひ参加したい』と言う人がいて喜んでくれるのがうれしい。力を合わせて重い竹を運んだ後、『竹に願いや名前を書けるのがありがたい』と言われ、『みんなに喜んでもらいたい』という思いで続けてきた」と振り返る。
ここ数年は人手不足と体力の衰えのため、「根付きの竹」を掘るボランティアを募ったりするなど一般参加者も加わった。根が付いている竹を掘り出すのは相応の技術と体力が必要で、それを継承する人材の確保が課題となっていた。
そうした中、昨年、岡本さんは腰を痛めてしまい奉納を断念。さらに肩も痛め、今年はすっかり諦めていたという。ところが正月、親戚の集まりで「もう少し頑張ってみようよ」と息子の嫁が声を掛け、友人にも「ほんまや、やめてしもたらあかんよ」と言われ、「いろんな人に協力してもらい、こうして奉納することになった」と岡本さん。
竹に願いや名前を書く参加者の様子を見て、「思いを込めて書いてはるでしょ。これを見る時が何よりうれしい」とも。
奉納された竹は、修二会を裏で支える「童子」と呼ばれる人達によって「お松明」に仕上げられる。