平城遷都1300年祭が開幕し、奈良県内の寺社で順次秘仏や秘宝の公開が行われるが、奈良には仏像マニアにもほとんど知られていない「仏像を守るための」仏像がある。仏像の名は「まもろう如来像」(通称=まもろうくん)。奈良市消防局(奈良市八条)5階の倉庫に安置されている。
まもろうくんは、1998年に東大寺戒壇院千手堂で火災が発生した際の仏像搬出時に、部位が外れて落下するなどして破損させてしまい、文化財に対する知識のなさを知った消防職員の苦い経験から、模擬仏像を使用して訓練することで今後に役立てようと翌1999年に製作されたもの。多くの国宝や重文の仏像がある奈良ならではの取り組みでもある。
仏像によっては部位をはずすことができるようになっていることから、まもろうくんも首と両手首が取り外しできる。148センチ、材質はケヤキ、後背178センチ、全長は220センチ。奈良市在住の乾漆彫愬木彫刻師が手がけたもので、制作費は約100万円。
模擬仏像であるため仏の魂こそ入っていないものの、まもろうくんには、重文や国宝の仏像にもひけを取らない貫禄があり、その表情は、消防職員を戒めるような厳しい表情にも、ねぎらうような優しい表情にも見てとれる。
まもろうくんは、今月23日から始まる文化財防火週間に合わせて行われる訓練に出動する。25日は国立博物館、26日は唐招提寺。訓練はともに10時から。