思いやりが鹿を守る-ドライバーに「シカの飛び出し注意」呼びかけ

「鹿苑」に保護されている断脚されたシカ

「鹿苑」に保護されている断脚されたシカ

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 奈良の鹿愛護会が今年7月に行った調査によると、現在奈良公園周辺にシカは1,052頭の生息が確認され、357頭のシカが死んだ。死亡原因は、179頭が疾病、76頭が交通事故によるもの。

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 奈良公園のシカの許容範囲は1,000頭から1,200頭とされており、天候や気象条件や栄養状態などにより子ジカの生まれる数に増減があるなどから、2007年から減少傾向にあるが1980年以降1,000~1,300頭の間を推移している。

 この季節は、発情期を迎えた雄ジカが雌ジカを追って道路への飛び出しや、道路に落ちたドングリなどを食べるため道路に出ることに加え、シカが冬毛の濃い茶色になるため、日没が早くなった秋はシカを確認しにくく交通事故が増える。シカは犬を怖がるため、公園内で犬を放すとビックリして道路に飛び出すことも。

 天然記念物の奈良公園のシカと接触事故を起こすと、文化財保護法違反で多くの罰金を払わなければならないなどのイメージがあるためか、事故が起きても同会に連絡せず現場を立ち去るドライバーが少なくいない。しかし、故意に殺傷した場合を除き、過失では罰則に問われることはない。けがを負わせてしまった場合は、すぐ同会に連絡し処置を施せば助かる命もあるという。

 けがを負ったシカなどを保護する施設の「鹿苑(ろくえん)」内には、交通事故に遭い断脚したシカが現在も数十頭保護されている。脚を失ったシカは、野犬などから逃げることができず襲われる可能性があるため、公園に放すことができない。そのため重症を負ったシカは一生「鹿苑」で過ごすことになってしまう。

 また、けがをして森に逃げ込んでしまったシカを暗闇で見つけるには困難で、処置が遅れてしまうここともあるため、シカを守るには事故を未然に防ぐことが必要になる。

 同会の池田佐知子事務局長は「奈良公園は人やシカだけではなく、さまざまな生き物が共存することで(奈良公園の芝を刈らなくてもきれいに保てるなど)バランスが整い自然が保たれている。さまざまな生き物の場として認識し、みんなで大切に生き物を気遣う思いやりを持ってもらえれば」と話し、「交通事故ゼロを目指し、シカも人も使う道路なので、時と場合によってシカが飛び出してくることもあると心にとどめてほしい。公園道はできるだけ迂回(うかい)していただき、シカが出てきても止まることのできるスピードで」と呼びかける。

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