雨になぞらえた砂を参拝客と激しく浴びせ合って豊作を願う大和の奇祭「砂かけ祭」が2月11日、廣瀬神社(北葛城郡河合町)で行われた。飛び交う砂が多いほどその年の豊作が訪れるといい、境内で砂のかけ合いが行われ歓声と悲鳴が境内に響き渡った。
田植え神事により五穀豊穣を祈願する御田祭りは全国に残るが、砂かけを行うのは水の神を奉る同神社ならでは。土砂降りのように砂が飛び交うのが恒例で、参拝者らはレインコートを着込み、構えたカメラにビニール袋をかぶせて完全防備の体制で同祭に参加。
拝殿前に6×10メートルの範囲にしめ縄を巡らせた神田に地元消防団員扮する田人と牛役が登場、田植えの動作を行う間も、子どもたちは砂を両手いっぱいに持ち、気もそぞろに。
田人らがくわで砂をすくって参拝客に投げつけ始めると、砂かけ合戦の火ぶたが切って落とされ、子どもたちも激しく応酬。集中砲火を避け、移動しながら所かまわず砂をかける田人を追い回した。
砂を浴びれば1年を無病息災で過ごせるともいい、ベビーカーの赤ちゃんに優しく砂をかぶせる光景も見られた。砂かけは約5分間続き、太鼓の合図でいったん終了。休憩を挟みながら10回行われたが、繰り返される間に田人の白装束、牛役の黒装束は砂まみれになった。
松苗と田餅まきには「せんとくん」も登場。やぐらに上がり、フェイントを交えるなどユーモアたっぷりにもちを振りまいていた。
米ロサンゼルス州出身の20代男性は「砂を投げるのがおもしろくて大好きになった。『ウシチャン』がかわいかった」と祭を楽しみ、香芝市から参加した50代女性も「初めて参加したが、なかなかない祭で、自分も参加できるところが楽しかった」と話していた。
廣瀬神社は大和盆地を流れる9つの河川の大和川への合流地点にあり、治水と豊穣を司る水の守り神「若宇加能売命」(わかうかのめのみこと)を奉る。廣瀬神社の御田祭りは675(天武4)年から「大忌祭」の流れをくんで連綿と続くが、樋口俊夫宮司によると、「砂かけ」がいつごろ始まったかは不明だという。