奈良大学博物館(奈良市山陵町、TEL 0742-44-1251)が現在、企画展「太田古朴(こぼく)が見た山里の文化財-高野山麓・細川八坂神社の仮面群-」を開催している。
太田古朴(1914~2000年)は奈良県吉野町に生まれ、奈良美術院で仏像修理を学び、その後独力で各地の仏像や石造物を調査し修理や研究を行った仏像研究家で、大学や行政機関に属さず在野の立場で活動した。同展では太田の代表的な仏像修理と研究の事例25点と、太田が依頼を受けて1975~77年に調査と仏像修理行った高野山麓・細川地区(和歌山県)の資料6点と文化財(仮面9点、面箱1点、仏像1点)を紹介する。この中で室町時代前期の能面(翁系面4面)を含む細川八坂神社の仮面群8面は初公開となる。
1959~60年に伝香寺(奈良市)の地蔵菩薩(ぼさつ)立像を修理した際の図面は、太田自筆の模式図が描かれていて、当時まだなかった「X線やCTスキャンで仏像を撮影し、像内納入品の画像を見る手法」と同様のアイデアといわれている。
同大学文化財学科の大河内智之准教授は「専門家のみならず、誰もが文化財を身近なものとして関心を持ち、これからの文化財保護のあるべき形を考える機会にしてもらえれば」と思いを込める。
開館時間は9時~16時30分(土曜は12時まで)。日曜、祝日休館。入場無料。7月27日まで。