春日大社境内の鹿苑(ろくえん)角切り場で10月10日、秋の伝統行事「鹿の角切り」が始まった。
「鹿の角切り」は、発情期を迎えて気性が荒くなった雄鹿が突き合って死傷したり、人に危害を加たりしないようにと行ているもので、江戸時代から続く奈良ならではの伝統行事。
正午に安全祈願祭が営まれた後、法被(はっぴ)にはちまき姿の勢子(せこ)約20人が真剣な面持ちで角切り場に入場した。必死に逃げる鹿を赤い旗の付いた竹竿(たけざお)を使って誘導しギリギリまで引き付けてから、縄の張られた「十字」と呼ばれる捕獲具を鹿の角を目がけて投げ、角に縄を掛けて捕らえると勢子の勇壮な姿に会場が沸いた。
縄をゆっくりとたぐり寄せて数人で鹿を押さえ込み、興奮した鹿に水を飲ませて落ち着かせ、神官役がのこぎりで角を切ると観衆から拍手が送られた。
完成した鹿の角は鋭く尖(とが)って硬く、少しでも気を抜くとけがにつながるため、会場では猛スピードで走る鹿と勢子との真剣勝負が繰り広げられる。完成した鹿の角には神経が通っておらず、鹿に痛みはないという。
大和郡山市から初めて訪れた仲谷陽子さん(43)は「実際に見ると迫力があり驚いた」と話していた。
開催時間は12時~15時(入場は14時30分まで)。約30分間隔で行われる。入場料は、大人=1,000円、子ども=500円。今月12日まで。