奈良の若草山で1月22日、古都の夜空を焦がす山焼きが行われ、多くの観光客らが赤々と燃え上がる炎の祭典を楽しんだ。
前線で火を付けるのは奈良市の消防団員。この日も約300人が参加し分団ごとに15のエリアに分かれて火を付けた。
毎年担当のエリアは変わり、約8年に1度、ふもとの観光客からもよく目に付く一重目の担当が回ってくるという。今回は、富雄分団が一重目の南側を担当した。同分団からは約40人が参加。普段は、防火・消火活動をする団員も、この日だけは火を放ち、「よく燃えろ」と願う。
17時から行われた消防団の出発式典の後、山を登り配置に着き、18時からは約600発の花火が打ち上げられた。団員らは、目の前で上がる迫力ある花火に携帯電話のカメラを向け、談笑を楽しんでいた。
18時15分、若草山全体に柳生ラッパ隊のラッパの音が響き渡り、横田昌浩分団長の「点火」の合図でたいまつを持った団員が枯れ草に一斉に火を付けた。
炎は瞬く間に広がり、一面火の海と化す。肌を焼くような熱風が団員を襲う中、団員らは真剣な表情で火の行方を見守る。炎の波はすぐに山を登り、同分団の担当エリアは、周囲のエリアよりも特によく燃え数分で一面を焼き尽くした。
もちろん消火を確認するのも団員の役目。水の入った約20キロあるジェットシューターを背負い熱く焼けた急な山肌を一歩一歩登り、水を掛けてくすぶる火を消し消火を確認していった。消防団に入って18年、一重目を担当するのは2回目という横田分団長は「よく燃えた」と満足げな表情をみせる。
奈良市消防団の黒文雄団長は「今年は昨年よりもよく燃えた。今年はもっと景気が良くなる」と期待を込めたほか、山焼きに参加した団員の活躍について「最高だった」とねぎらった。