入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良市高畑町、TEL 0742-22-9811)で現在、1992年の開館からこれまでに展示した約2,800点からえりすぐった作品を展示する「平城遷都1300年記念 入江泰吉傑作選-大和路-後期」が開かれている。1965(昭和40)年~1991年の大和路の風景「秋冬編」64点のほか、入江氏の思い入れの深かった仏像写真42点も展示する。
秋が一番好きだったという入江氏。奈良のイメージには、より歴史を感じることができる秋と冬が合うとの思いから秋・冬の風景写真には力作が多く、「霧たちこめる大仏殿への小径」(1968年作)では、一見は特徴的な被写体がない何気ない風景も、霧という要素が加わることで奈良らしさを表現する入江氏の作風の代表的な作品として知られる。
仏像写真では、初期にはさまざまな角度から仏像を撮影しているが、晩年の作品になると参拝者が拝む位置から仏像を見上げて撮るようになるなど、仏像に対する入江氏の心境の変化も垣間見ることができる。
同館学芸委員の説田さんは「何気ないたたずまいに歴史が残っている奈良。入江作品を見てから、奈良を巡ってもらえれば風景の見方も変わるのでは」と話す。
開館時間は9時30分~17時(入館は16時30分まで)。入場料は、一般=500円、高校生・大学生=200円、中学生以下=100円(小・中・高生は毎週土曜無料)。展示期間中の休館日は9月27日のみ。11月14日まで。毎月第2・4土曜の14時からは学芸員が作品解説を行う。