中高生ら17人が参加し、映画プロ集団による技術的サポートやアドバイスの下、映画制作する「ユースシネマプロジェクト」が8月15日~22日、奈良市内で行われた。
映画監督の河瀬直美さんがエグゼクティブディレクターを務める「なら国際映画祭」が主催する今年で4回目の企画。「ホテル尾花」(奈良市高畑町)を拠点とし、周辺で撮影する。参加者は3グループに分かれ、それぞれが一つの映画の制作(ロケハン、企画、撮影、編集、試写会)を行った。
参加者の、沖野日向(ひなた)さん(高1)は「今年は多様性、共存、依存、恋愛事情という私たちの世代が抱いているテーマが多い。オタク系の『推し』の話題では、その心理も知れて楽しかった」と目を輝かせる。
今年のゲスト講師 映画監督リム・カーワイさんは「実は、制作途中で子どもたちから先生役が必要と私にオファーがあり出演した。もちろん演出は子どもたちで、私は指示に従った」とほほ笑む。「このワークショップは、映画を完成させ一般の人に披露するというミッションがありレベルが高い。ユース世代ともなると意見がしっかりしていて大人顔負けのディスカッションが繰り広げられ想像以上だった」と話す。「映画は1人では作れない、チームでいかにコミュニケーションを取り、作りたいものを作っていくかというプロセスを学べたようだ」と振り返る。
今回の参加者のうち9人がリピーターで、4年続けての参加者もいるという。同映画祭実行委員長の芹井祐文(ゆうや)さんは「他の教育と違い、みんなでディスカッションして自分たちのものを作り、それに前のめりになれる醍醐味(だいごみ)がある。この経験を通して映画を撮りだす人、音楽などアーティスト活動を始める人も出てきて、さまざまな興味や関心を持つきっかけとなっている。これは『なら国際映画祭』の大きなビジョンであり非常にうれしい」と話す。
参加者を支えるサポートスタッフには映像を学んでいる大学生が多く、プロと関われる貴重な場にもなっていて、映画産業を担う人をみんなで育てられる仕組みになっているという。初めての取り組みとして、「九州大学」のインターンシップも受け入れた。環境設計を学ぶ学生4人が参加、社会的課題を見つけ未来を創造するという視点が映画作りと近しいので学びたいと依頼を受けたという。
芹井さんは「映画産業を盛り上げていくためにできることの一つが次世代の育成。これからもユース世代に向けてさまざまな企画で取り組む。日本や世界で、映画の位置付けを世の中に広めていきたい。少しずつだが発展できる予感はしている」と思いを込める。
完成した映画は、9月18日~20日に開催する「なら国際映画祭プレイベント2021」の最終日、「東大寺 金鐘ホール」での上映会とトークイベントを予定している。