台風12号で被害を受けた市町村に奈良市消防局からも奈良県消防広域相互応援協定に基づいて今日までに延べ62人が出動し現地で活動を行っている。
応援要請があったのは9月5日の16時40分。翌日の早朝4時30分に奈良市八条の同局から指揮隊と救助隊の2隊、計 9人が出発した。指揮隊は、現地で素早く情報収集を行い、指示を出し被害を最小限に食い止める役目を担う。
同局災害対策室・消防課指揮支援隊長の宮本元嗣さんは、6日と8日に現地で活動を行った。初日の出発時は、「テレビや新聞などの報道の情報しかない状態だった」と振り返る。
6日は、7時35分に応援隊の集結場所となった五條市の大塔郷土館に到着、道路は寸断していたためそこからは、ストライカーやバール、画像探査装置?型などの救助資機材を背負い、約1時間かけて徒歩で大塔町宇井地区に入り捜索活動を開始。
同地区では、山の側面が崩れ谷川をそのまま30メートルほどの高さの対岸まで押し上げる形で住宅13棟を飲み込んだ。生活用品などが無残に散らばり、土砂や岩、砕けた擁壁のコンクリートなどが2~3メートルほど堆積した状態。何メートルもある大きな岩も多くあり作業の妨げとなったが、そんな中でも重機は入れないため手作業となった。8日の十津川村長殿地区の活動では、砂利の堆積でスコップも入りにくい状態だったという。
現地の活動は、滑落や土砂ダム崩壊の危険性に加えて、台風が過ぎてからは日差しも厳しくなり暑さも隊員らの体力を奪った。
「一生懸命だった」と宮本さん。「(行方不明者を)見つけ出してあげたい」との思いで、隊員らは一心にスコップを手に必死に捜索活動を行った。宮本さん自らがスコップを手にすることも。しかし、そんな隊員らの思いに反して人力だけでの作業は難航し、残念ならが行方不明者の発見には至らなかった。
「自然災害は怖い」と改めて感じたという宮本さん。災害の少ない奈良市、しかし想定を超える災害が続く今、宮本さんは「日頃から防災意識を高める必要がある。地区の避難所を確認しておき、いち早い避難を」と訴える。
同消防局からは、16日も9人の隊員が現地に入る。応援隊の出動は16日でいったん終了する。