奈良の初夏を彩る伝統行事「薪御能(たきぎのおう)」が5月11日・12日、春日大社と興福寺の南大門跡で行われた。両日合わせて約6千人が訪れ、はかがり火が役者を照らす独特の幻想的な世界が観衆を魅了した。
薪御能は、平安時代の初期にあたる869年に興福寺の修二会で猿楽を奉納したことが始まりとされ、1952年からは奈良発祥の観世流、金春流、宝生流、金剛流の能楽4座が競演する。現在では毎年5月11日・12日に行われており、野外能の起源でもある。
興福寺では、18時過ぎに修徒が「火入れ」し薪火の光が舞台を照らし幻想的な雰囲気の中、金剛流が、源氏物語の葵(あおい)の巻などを題材にした古曲の「葵上」を披露。
終演後、薪御能保存協会の菊池攻会長が「2日間にわたり無事終えることができた。来年は平城京に遷都されて1300年、また、興福寺の創建1300年当たる節目の年になるので、またのお越しをお待ちしている」と締めくくった。