1963(昭和38)年4月27日生まれ(55)。奈良市出身で1986(昭和61)年にモデルでデビュー。ファッション誌「メンズノンノ」、パリコレのモデルで活動後、1988(昭和63)年に俳優に転身。映画「マリリンに逢いたい」でデビュー。渡米留学など経て、現在、映画・ドラマ・舞台など国内外の作品に出演し、幅広く活動を続け、連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)や奈良が舞台の映画「二階堂家物語」で「なら国際映画祭」の映画製作プロジェクトNARAtive(ナラティブ)」から誕生した映画で主演。
-一瞬を切り取るモデルからストーリーを表現する俳優への転身。この経験が加藤さんならではの発信力につながっていると感じるのですが…。
加藤 そうですね。人はストーリーに感動し、ストーリーに価値を見いだす。由来や「どういうものなんだ」という感動に対価を払う。それを分かりやすく提示してあげるのが発信するということ。従来のものに発想をプラスしてあげる必要があるのでは。
-奈良は、ともすれば地味なイメージに捉えられますが…。
加藤 色で例えると、赤だけでは絵は描けない、茶色があるから赤が引き立つ。伝承と映える工夫とは別に考えないといけない。表現方法も、オレンジ色は柿色に。「レトロ」や「すてき」と表現するのか「地味」とするのかプレゼンテーションの仕方が大事なのでは。
-素晴らしい伝統技術なのに、継承する職人不足問題をどう感じますか。
加藤 伝統技術は継いでいかなければならないと思っている。ただ「伝統、伝統」とうたったり、クールだったりするだけではダメ。技術の「意義、価値」を伝えないといけない。それに「技術を継ぐこと」が大事なわけで「商品を継ぐ」とは別。伝統技術を使って、商品の形を変えて発信してみることも必要。
-何かヒントはありますか?
加藤 例えば、友禅染めをジーンズと融合させたりとか…。世界では「なぜこんな片田舎にチョコレート店が」ということがある。それは職人が「この土地のこの牛から取れるミルクでないと、この味は出せない」というこだわり。輸出をしたら溶けるので現地に行かないと食べることができない。
だから、わざわざ行きたくなる。 そして、本質を説明できる専門家や研究家の意見も取り入れて、素人が思う「なぜだろう」を納得させることも大事。
-海外の方の反応が高く、逆輸入でその価値に気付くことがありますが…。
加藤 確かにありますね。だから世界に、しかも日本のことが大好きな国や人に発信しなければいけない。
-加藤さんが考える奈良の価値とは何ですか?
加藤 いろいろな文化が「発祥として残っている地域」が奈良。ここを見直すことで日本の未来は救われる部分があると思う。奈良にある技術や「何か」が役立つ温故知新。何も無かった時代の文化は本能的。 そこから発展した文化はコンピューター制御されていて、いつかAIに支配、シンギュラリティされる。
AIにはまねできない強みがまだまだ残っているのが奈良。「人の心」や「ファジー」を知るとAIに対抗できる技術が見つかるのでは。
-最後に。奈良に行ってみたいと感じるポイントはどこにあるのでしょうか。
加藤 他の地域には残されていないもの、奈良にはそれがつぶされずに残っている。だから、奈良は大学であり、まち自体が学びの場。そこを発信し、それを掘り下げると「専門的なことを学べる場」と認識されていく。すると奈良に行きたくなるのではないかと考えています。
-ありがとうございました。