出版社「樹林舎」(愛知県名古屋市)が8月8日、600点以上の写真と解説で昭和の奈良を紹介する「奈良市の昭和」を出版した。
同社が集めた約5,500点の写真から未発表のものを中心に解説とともに掲載。約半数が一般からの提供だという。定価が9,990円と高額にもかかわらず、限定1500冊のうち約1200冊の予約がすでに入っているという好調な売り上げで、残りの300冊が奈良市の書店などに並ぶ。
「戦時下の奈良」や「戦前・戦中の学校教育」、「奈良観光とレジャーふたつの消えた遊園地」、「交通網の整備・発展とともに」など12の項目に分けて掲載する。
かつて奈良にあった「尾花劇場」(昭和10年代前半)を写した写真では、「靖国神社の女神」ののぼりも確認でき、当時は戦意高揚を目的とした映画も上映されていたという。高天町を写した写真では、市内循環バスと電車、ダッソサン・ブルーバードが平行して走る姿が収められ当時の生活も垣間見ることができる。
編集を担当した同社の野村さんは「意義深い作品になった」と自信を込める。監修した入江泰吉記念奈良市写真美術館と奈良市美術館の学芸員・説田さんは「もっと奈良のことを知ってもらい、多くの人と一緒に見てもらいその時代を生きた人の声に耳を傾けるきっかけになれば」と話す。
仕様はA4判、280ページ(うちカラー16ページ)。価格は9,980円。