秋晴れの中、古都奈良の伝統行事「鹿の角きり」が10月11日、奈良公園内の鹿苑で始まった。会場には約1,500人の観衆が訪れ、勇壮な秋の伝統行事を楽しんだ。
9月から12月に発情期を迎え気性が荒くなる雄鹿が、大きく伸びた角で突き合い死傷しないように、また人に危害を与えないように行われるもので、1671年から始まったと伝えられている。
安全祈願が行われた後、2頭から3頭の鹿を会場に追いやり、法被をまとった勢子約20人が滑り止めの水を軍手に含ませ、気合を入れ会場に入る。「十字」や「だんぴ」と呼ばれる道具を巧みに操り、時速50キロ近いスピードで逃げ回る鹿目がけ投げ、角に縄が掛かると会場は歓声と拍手に包まれた。激しく暴れる鹿を数人がかりで押さえ込み、鳥帽子、直垂姿の神官が鹿に水を飲ませて落ち着かせ、のこぎりで角を切った。角が丈夫でのこぎりの刃が折れるハプニングも。
現在、奈良公園の鹿にいる鹿の数は1,128頭。動物が人を共存しているのは世界的に見ても貴重。しかし、毎年100頭以上の鹿が死傷している。死亡の原因として多いのが交通事故。鹿が犬に驚いて道路に飛び出すものが大半を占める。同行事を主催する「奈良の鹿愛護会」は「奈良公園で犬の散歩をさせないように、また虫歯の原因となるためお弁当の残飯はあげないでほしい」と呼びかけている。
鹿の角きりは、角が三又にわかれた4歳以上の鹿に行われ、角の大きさは、大きいもので長さ約50センチ、重さが1.5キロにもなる。鹿の体調により出血することはあるが、神経はなく痛みはない。3日間で約50頭の角を切る。
開催時間は12時~15時。入場料は、大人=1,000円、子ども=300円。今月13日まで。