「たんすに入れて置くと着物が増える」「女性が持つと幸せになる」などのいわれのある寺院で法要の際に諸仏を供養するためにまかれる「散華(さんげ)」が、奈良の新しい土産品として注目を集めている。
かつては生花がまかれていたが、現在はハスの花をかたどった色紙が使用される散華。奈良では50年ほど前から、著名な日本画家や版画家が描いた芸術作品として楽しめるものも増えたことから収集家も増えてきた。中には漫画家の藤子不二夫さん、藤子不二夫Aさん、赤塚不二夫さんやなど漫画のキャラクターが描かれたユニークなものもある。
そうした散華の収集・保存、歴史の研究など、散華の普及を図っているのがNPO法人美術散華保存会(奈良市芝辻町)。まかれる散華を我先にと取りに行く楽しさと、手にした時の喜びをきっかけに散華の魅力にはまったという代表の岡村元嗣さんが2008年に設立した。
岡村印刷工業(高市郡高取町)社長でもある岡村さん。同保存会では、寺院の散華製作の支援も行い、県内の寺院だけでなく米国の寺院の散華も手掛ける。著名な画家などに依頼するデザインを同社の技術を生かし、絵画がより鮮明に表現できるように多色刷りで印刷を行うほか、金色の粉を振り掛けたきらびやかなものも。
散華について、岡村さんは「日本画を気軽に味わえるのも魅力。散華をインテリアや、ポストカードなどで身近に楽しんでもらいたい」と話し、今後は「海外へのアピールもしていきたい」と意気込む。「多くの文化財がある奈良で今、新しい文化財をつくる活動をしていかないと、200年先には文化財はなくなっているのでは」と危惧(きぐ)し、「美術散華を200年後の文化財に」と力を込める。
散華は、吉野の桜を守るチャリティー用に製作された「吉野山散華」や著名な画家などによる「なら散華」などがあり、それぞれ3枚1組(価格1,000円)で県内の土産品店などで販売している。