入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良市高畑町、TEL 0742-22-9811)で10月3日から、万葉集の歌集とともに写真家入江泰吉の写真作品を紹介する「入江泰吉 万葉恋文 Manyo Love Letter」が開催されている。
入江泰吉は、万葉集の魅力について「暗くて重い歴史より、古代の人々の暮らしや文化、思想などの『生き様』を感じとるのが魅力」とし、万葉集の歌心を写真に投影してきた。その中でも、多く詠まれている恋の歌にスポットを当て、「想いのうた」「愛のうた」「別れのうた」の3ブロックに分けて花や風景を中心に108点を展示する。
「長谷街道山里雪の吉隠」(1973年作)は、「降る雪は あはにな振りそ 吉隠の 猪養の岡の 寒からまくに」をイメージした作品で、降り始めの雪を撮影するため、現地に何度も足を運ぶなどした作品で泰吉は会心の作としている。
「究極の美は花であり、自然が一番素晴らしい」としていた泰吉は、撮影の七つ道具にゴミを拾う釣りざおのようなものや、撮影に邪魔になる草木を折ることなく撮影していたとされ、自然に対する愛情が深い。そうした泰吉の表現する自然の奥深さを垣間見ることのできる展示になっている。
同館学芸員の説田晃大さんは「入江作品に合わせて、万葉集の恋愛感を知るきっかけになれば」と話す。
開館時間は9時30分~17時(入館は16時30分まで)。入場料は、一般=500円、高校生・大学生=200円、中学生以下=100円(小・中・高校生は毎週土曜無料)。月曜休館(祝日の場合は開館、翌日休館)。12月23日まで。11月14日・15日の関西文化の日は入場無料。