県立高円高校 34期 音楽科卒業生を中心とする有志らの「鹿鳴会」が主催する演奏会「オトノカケラ」が8月13日、「なら100年会館」中ホール(奈良市三条宮前町)で行われた。奈良で音楽を志す若い力を応援する企画。
今回は、世界情勢やコロナ禍で簡単に行けなくなってしまった世界旅行を音楽で体験してもらおうと、あらゆる国にちなんだクラシック・ジャズ・ポップス・組曲など11プログラムを約20人の奏者が木管・金管・弦楽・ピアノ・歌・打楽器などで披露した。
音楽大学で声楽を学ぶソプラノとテノールの2人がオペラ「ドン・ジョバンニ」より第2番のワンシーンを演技付きで披露する華やかなステージで始まった。オーボエ奏者によるアドルフ・デランドル「序曲とポロネーズ」の独奏、2人のピアニストの息の合った演奏が見どころのモーツァルト「2台ピアノのためのソナタ 二長調」などで聴衆を盛り上げた。
マリンバ独奏では「ある少女から聞いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でのつらく恐ろしい体験談」を基に作曲したといわれる、ジブコヴィッチの「イリヤーシュ」を演奏。「ロシアがウクライナ侵攻している今、音楽を奏でるものとしてこの曲を選んだ」と司会者が伝え観客は深く聞き入った。
ジャズユニットは同校卒業時から、それぞれ別の音楽大学・教育大学などに進みながらも全国で演奏活動も続けている男女6人の「はらぺこミュージシャンズ」が「スペイン」と「チュニジアの夜」を演奏し会場を盛り上げた。
今回特徴的な企画として、音楽大学で作曲を学ぶメンバーに同会から「奈良がモチーフの曲を」と制作依頼したという組曲「表象」の披露が行われた。ワルツ「草原の風」では平城宮跡の夜、「邪鬼」は興福寺多聞天像、今井町の町並みをイメージした「ティールブルーの街で」の3曲。作曲者は解説で「3曲の雰囲気と対比を楽しんでほしい」と話しそれぞれ木管五重奏・金管五重奏・弦楽四重奏で披露した。
卒業生らの音楽教員 山白育枝先生は「それぞれの進む道や背景が変わっても、彼らにとって音楽が共通言語なんだと、生き生きとした表情から感じた」とほほ笑む。
観客からは「クラシックやジャズなどアラカルトで楽しい。若い人の力を感じる演奏を生で聞けて良かった。企画も演奏もレベルが高く、音楽を専門に学ぶ頑張りを感じた。次回の開催も楽しみにしている」などの声が聞かれた。
企画を担当した同会の西垣佳音さんは「舞台の企画・設営をするアートマネジメントを学んだ経験を生かし、毎回魅力を感じていただける企画を用意し開催していきたい」と意欲を見せる。