東大寺戒壇院近くのアートギャラリー五風舎(奈良市水門町、TEL 0742-22-5514)で5月1日、「金継ぎ(きんつぎ)修理の巧み展9」が始まった。
奈良市在住の工芸家・山中俊彦さん門下の女性10人が、伝統的な修理法の金継ぎを基礎に、普段使いの食器から骨董(こっとう)品まで修理した作品150点を展示する。本漆、ベンガラ、本金、銀などを使い、焼き物、ガラス、漆器などに「食にも安全に使える金継ぎ」で割れや継ぎを修理した。
山中さんは、正倉院御物にも見られる木象嵌(もくぞうがん)を手掛ける工芸作家で、本漆や本金に精通していることから金継ぎ講座を主宰している。
出展者で埼玉県浦和市在住の水野リル子さんは「骨董市や料亭で、金で修理された器を目にし、色気があり粋ですてきと思っていた。そんなとき東日本大震災に遭い大きなショックを受けたが、『たくさんの壊れたものを自分が直してあげたいという思いとともに、いつどんなことが起きるか分からないので、できる時にやってみたいことをやろう』と山中先生の奈良の工房まで学びに来る決心がついた」振り返る。
「思い入れのある器が壊れたとき、金継ぎで修理し使い続けるとさらに愛着が増す。もし欠けてもここに金を入れたらもっとすてきになるだろうなと考えるのも楽しみ」とも話し、「陶芸作家が作ったお気に入りの盃が割れてしまったという友人に銀で修理してあげたら『こんなにすてきになるとは思わなかった。使うのが楽しみ』と、とても感謝された」とほほ笑む。
出展者で京都在住の青山由起子さんは「金継ぎは古来より続いてきた技術。西洋の直し物が例えば割れた所が分からないのが美だとすると、傷を生かす美」と話す。「物にあふれた現代、断捨離がブームだが、物を愛(め)でて割れや欠けを修理して使い共に暮らす。人も病気になったり傷ついたりしても、もう一度継ぎ直せば生きて行ける。そんな生き方まで教えてくれた」とも。
期間中、修理の相談にも出展者が応じるという。開催時間は11時~17時30分。入場無料。今月6日まで。