入江泰吉記念奈良市写真美術館は12月16日、入江作品の制作の現場や過程を探るために現地を訪ねる「第18回入江泰吉の眼を歩く-入江邸と東大寺界隈(かいわい)-」を行い、奈良市水門町にある旧入江邸の内部を初めて一般公開した。
1949(昭和24)年ごろから住んでいた家で、敷地面積は504.64平方メートル、離れの暗室を含めて建物総床面積は109.96平方メートルで、部屋数は書斎や茶室、離れなど合わせて8部屋。
入江氏が亡くなった後、2004年に亡くなった夫人・ミツエ氏が生前の1999年9月に奈良市に寄贈したもの。現在は同館が管理を行い、奈良市が2014年の公開を目指して耐震性を高めるなどの改修を行う予定。
当日は、奈良大学名誉教授の浅田隆さんと、入江のまな弟子で写真家の牧野貞之さんが、入江作品の多くを占める東大寺界隈を参加者と共に歩きながら解説。入江邸では浅田さんによる講演が行われ、入江氏は撮影する前にイメージや構想を持ち、イメージした写真を撮るために妥協はせず、忍耐と自然との闘いだったなどの話を披露した。
牧野さんからは、入江氏と約3年寝食を共にした当時の話などがあり、撮影時に邪魔になった雑草でも抜かずに曲げるなどして撮影後は元通りに戻す、朝起きると庭の手入れをするなど、自然を愛していたことや、自分に厳しく他人には優しい性格だったと明かした。そのほか、カメラのレンズは、肉眼で見た状態に近いようにと、広角や望遠のレンズは使わなかったことなども明かし、参加者は真剣な表情で聞き入った。
内部の見学では書斎も公開。書斎から見える風景や、並んだ書籍にも参加者は興味深げに見入っていた。