東日本大震災の被災地で救援活動に当たった奈良市消防局の中央消防署第一消防小隊・副小隊長の山尾孝弘さん(39)がコーチを務める少年野球チーム「大安寺アパッチライオンズ」が3月31日、JR奈良駅前と近鉄新大宮駅前で募金活動を行い、21万9,080円の義援金を集めた。
同チームで6年前からコーチを務める山尾さんは、緊急消防援助隊の第2隊として3月14日に奈良を出発。宮城県山元町で捜索活動などに当たった。余震が続く状況の中、奈良県隊長から「絶対にこのメンバーで帰ってくることが絶対条件」という言葉を受けて隊員らは一丸となり活動した。懸命に行った捜索活動も隊員らの思いがかなわず生存者の発見には至らなかったが、3日間の捜索で38体の遺体を見つけ出した。
現地に到着した際の被災地の状況については「すごいとしか言いようがない」と言葉を詰まらせる。しかしそんな中でも消防車を見たら手を振り「頑張って」と声援を送ってくれるなど、被災者の明るい笑顔に勇気付けられたという。救助に向かう際は、食料なども用意していったが、ほとんどがインスタントのカップラーメンだった。現地の消防局の隊員は、震災後一度も家に帰らずに救助活動に当たっている状況にもかかわらず、奈良の隊員らを気遣ってか食べ物を用意してくれたこともあったという。
奈良に帰ると山尾さんは「普通の生活ができることのありがたさ」を子どもたちに伝え、当日は「野球をしたくてもできない人もいる。大きい声で募金を呼びかけて」と声を掛け、メンバーは声を張り上げて募金活動を行った。
同チームのキャプテン中辻亮太郎くん(11)は「震災後の現地に行って実際に見た山尾コーチに聞いたり、毎日流れているニュースを見たりして信じられないと思った。最初はあまり身近なことじゃないと思っていたが、何回もニュースなどを見ているうちに人ごとではないような気がしてきた。その中にも野球が大好きでやりたい人たちもたくさんいると思うので、僕たちのできることをやろうと思い声を掛けた」と振り返る。
副キャプテンの山尾拓摩くん(11)は「震災に遭われた人たちの事を考えてみると、今の自分はこんな楽にしていていいのか?そのようなことを考えて僕たちは募金活動や節電、節水をして、被災地の人たちと一緒に頑張りたい。僕たちにできることはあまりないが、募金活動のときは声がかれるまで通行人の方たちに呼びかけた」と話す。
義援金は、奈良市少年軟式野球連盟を通じて24日に奈良市長に手渡される。