文化財防火デーに合わせて1月26日、奈良国立博物館(奈良市登大路町)で合同消防訓練が行われた。同館職員約50人と奈良市中央消防署、北消防署、南消防署の消防隊員ら約40人が参加し、真剣な面持ちで本番さながらに訓練に取り組んだ。
訓練は、同館本館付属棟の機械室から出火、同館自衛消防団の初期消火も効果なく建物全体が延焼し、観覧者が数名取り残されているとの想定の下、放水や救助活動が行われ、参加者らはきびきびとした動作で訓練に臨み、万が一に備えて士気を高めた。
訓練を終えて、同館の湯山賢一館長は「これからも後世に文化財を守り伝えていくため、防火防災の心構えを作っていかなければならない」と決意を新たにし、「奈良市消防に守られているということを改めて認識した」と話した。
中央消防署の清水武署長は「終始熱心に取り組んでいただき、有意義な訓練だった。技術の向上を図ることができた」と講評。加えて「今年に入って雨が少なく火災が起こりやすい状態。家庭でも気をつけてほしい」と注意を促した。
その後、同館の講堂で第12回文化財防火ゼミナール」も行われ、同館の保存修理指導室長の谷口耕生さんや、立命館大学の大窪健之教授が講演を行った。
谷口さんの「海外に流出した日本の文化財」と題した講演では、文化財防火デーの制定のきっかけとなった、1949(昭和24)年の法隆寺の金堂火災で焼失した壁画の説明や、1868年の神仏分離令により重要な文化財を軽視したことで海外に流出してしまったなど、歴史になぞり文化財の大切さを解説し、参加者約150人が熱心に聞き入っていた。