全盲のパーソナリティー、ならドットFMから元気に放送

番組収録を行う「ならどっとFM」の全盲のパーソナリティー上岡みよさん

番組収録を行う「ならどっとFM」の全盲のパーソナリティー上岡みよさん

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 コミュニティーFM「ならどっとFM」(奈良市西新屋町、周波数78.4MHz)で7年間にわたり番組を届ける全盲のパーソナリティー上岡みよさん(30)は、毎週地域の情報と明るい声を電波に乗せ届けている。

「ないものは作ってしまえ」という上岡さんは、現在はまっているという数字のパズルゲームのボードも自作した

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 上岡さんは、点字印刷などを請け負うNPO法人自立支援ステーション「ぽかぽか」内の作業所「コスモス」のスタッフとして働きながら、ラジオのパーソナリティーも努める。現在担当する番組は、メーンMCを努める「みよさんのメガネ」と、サブMCを担当する「It’s Bluegrass time」。「みよさんのメガネ」では、視覚障害に関する話題や奈良のイベント情報などを発信している。

 7年ほど前に、「地元に密着したことで何かできなないかと考えている際に、たまたま新聞に載っていた募集広告に応募したことがパーソナリティーになるきっかけ。「幼いころからラジオ好きだったが、自分がしゃべる立場になるなんて思ってもいなかった」と上岡さん。すぐにアシスタントとしてデビューし、バリアフリーの情報を発信する一つのコーナーを任されるようになり、その後独立番組を担当するようになった。 

 上岡さんのモットーは「こんなに面白い世界があるというのを感じてもらえれば」。これは、病気で視覚障害を患った知人の言葉で、「これができない、あれができないと、失ったものを数える人が多い中、こんなに面白い世界を発見できた」と前向きで楽しそうに発言する言葉に心を打たれたということから。「視覚障害は、誰がいつなってもおかしくない、明日はわが身。そんな時にはこの番組のことを思い出して、この世界も悪いもんじゃないと感じてもらいたい」とも。

 上岡さんは、多くの先輩が奈良を離れる中、若者がみんな奈良を離れたら奈良はどうなるの?という危機感もあり、奈良にとどまることを決意したという。これまでに、大手の放送局からの誘いもあったが地元を愛する上岡さんの気持ちから、地元に密着した同局で情報発信を続けているという。2008年には、上岡さんがパーソナリティーを努めた番組が「第10回JCBA近畿コミュニティー放送賞」を受賞した。

 同局で2月1日に行われた番組収録では、マイクテストを終えた後、生放送同様の収録が始まる。上岡さんは分厚い点字の資料を指でなぞりながら、約30分間ノンストップでしゃべり続け、時おり愛好品の手巻き式の懐中時計を触り時間を確認しながら時間内に要点をまとめてしゃべり上げた。

 放送を続けてきて良かったこととして、「スタッフやさまざまな年齢・職業の人との触れ合いが楽しい」という上岡さんは「今後もできる限り長く番組を続けていきたい」と意気込む。

 この日は、上岡さんがサブを努める番組の収録も行われ、メーンMC・中川さんとの息の合った掛け合いで、「みよのメガネ」とはまた違ったリラックスした様子で収録を終えた。おっとりとした、聞き取りやすい口調で、独特の世界観を醸し出す上岡さんの声に癒やされるとの声もあり、健常者のリスナーも少なくない。

 オンエアは、「みよさんのメガネ」=毎週金曜10時~・翌週火曜19時30分~、「It’s Bluegrass time」=毎週月曜10時15分~・金曜12時31分~。

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