奈良市消防局南消防署(奈良市八条)の中村輝安署長は2月17日、昨年12月23日に発生した救急事故で素早い連携とAED(自動体外式除細動器)を使用した適切な応急処置で、男性の命を救った勇気ある行動に対して奈良西部病院の櫻井立良理事長に感謝状を進呈した。AEDを使用しての心拍再開は奈良市で初めて。
この救急事故は、奈良国際ゴルフ場で昨年12月23日7時30分ごろ、同ゴルフ場内の練習場で起こった。練習をしていた30代の男性が急に倒れ、同場の職員が駆け付け来場者に医師がいなかと探し回った。そこにたまたま居合わせたのが櫻井さんだ。チェックインの手続きを行っていた櫻井さんは、騒然とする雰囲気を感じ取り、「これは尋常じゃない。これはあかん」と察知し、カウンターから練習場までの約400メートルを上着も脱がないまま猛ダッシュした。
現場に着いた櫻井さんは、男性の状況を確認し心肺停止と判断。すぐに約300回、約3分の間、心臓マッサージを続けた。そうした中、同ゴルフ場職員が現場にAEDを運び込み、要救助者にパットを張った。AEDからの指示に従って1度目の電気ショックを行い、そのまま心臓マッサージを続けて、AEDの2度目の指示でスイッチを入れると、呼吸をするような素振りが見えたため、人口呼吸を行った。その後3度目の指示でスイッチを入れ、救急車が到着。救急車内での処置中に男性は意識を取り戻した。
男性が倒れていた場所の床が固く、心臓マッサージが効果的に行えたことや、同ゴルフ場職員の的確な対応に加え、救急車との連携がしっかりととれたことがあり、男性は奇跡的に後遺症もなく社会復帰を果たした。
野外での処置は初めてだったと言う櫻井さんは当時を振り返り、「分単位の勝負。悔いを残したらあかん。何とか助けたい」と言う気持ちで人命救助に当たったという。「普段は病院で診察に携わっている。今回、現場の人たちと協力し、自らバイスタンダーとしてCPR(心肺蘇生術)を行ってみて、やはりバイスタンダー、消防隊、受け入れ病院との連携の大切さを痛感した」と話し、救命活動の向上を図るMC協議会の活動に期待を寄せた。
同ゴルフ場の支配人の足高圭亮さんは「AEDを使って人の命が助かったことによりスタッフ一同、応急手当の効果を目の当たりにした。これからも応急手当の講習を定期的に実施し、すべてのスタッフが対応できるようにしたいと考えている」と話す。