能登半島地震被災地支援のために、映画「一献の系譜」チャリティー上映会が5月1日、奈良商工会議所(奈良市西大寺南町)で開催された。
2015(平成27)年に公開された同映画は、能登の酒造りの世界を追った石井かほり監督によるドキュメンタリー。1月1日の地震発生後、被災地支援のチャリティー上映会が全国各地で行われている。奈良では、市内在住で専門学校非常勤講師の小林康子さんが、自身が3月に参加した奈良市の同チャリティー上映会で、その趣旨に共感し「被災地の人々に寄り添える支援がしたい」と企画した。
上映会には県内をはじめ、兵庫県や大阪府などからおよそ120人が集まった。参加者からは「復興に少しでも役に立ちたい」「日本酒が大好き。酒造りの工程や、杜氏(とうじ)とその家族、地域の人たちの思いに深く感動した」「伝統を守るということの意味、魂が受け継がれ脈々と続いているのがよく分かった」「映画に残る景色が地震でどのように変わってしまったのか、映画に出ていた人たちのことや酒造りの伝統が心配」などの感想が聞かれた。
上映後、石井監督が登壇し、能登半島の珠洲市と輪島市を4月26日~28日に訪れた時の状況を写真と共に紹介した。「被災した友人たちの話を聞けた。能登の人は明るくて辛抱強いから、うっかり安心しかけていたが違った。能登の人たちの今の声を聞き取りして、私がちゃんと伝えなければいけないと思った」とし、「一番被害がひどいといわれる地域に入ったが4カ月たってなお、手付かずのエリアが多い。倒壊した家屋が放置されているだけでなく、それらを片付けるための重機の音も聞こえない。能登はまだ全然大丈夫じゃない」と強く伝えた。「今、そしてこれから何が必要か、生きた支援を継続しなければ」と思いを込める。
主催した小林さんは「チャリティー代だけを手渡しに来場された人も多かった。上映後、沸き起こった大きな拍手に、被災地に寄り添い続けていく皆さんの本気の思いの強さを感じた。微力でも誰かの役に立てる行動を続けていきたい」と話す。集まった収益は必要経費を除き、「ほくりくみらい基金」に寄付し、復興支援活動に役立てられる。