節分の2月3日、信貴山朝護孫子寺(生駒郡平群町)で本尊の毘沙門天に追われて寺域を逃げ回った鬼が近所の家々へとくり出す「鬼追式」が行われ、突然の鬼の訪問に子どもたちが上を下への大騒ぎとなった。
鬼追式は、木づちや棒を手にした計6人の赤鬼と青鬼がさい銭箱を乗り越えて本堂に踊りこみ、厳かな節分大法要の余韻を打ち砕いた。年男・年女や僧侶から一斉に豆の雨が飛びかったが鬼退治には至らず、毘沙門天が光臨して人々に加勢。吉祥天女も福豆を授けて配り歩き、鬼たちを本堂から追い返すことに成功。
逃げ出した鬼たちは寺内の3つの宿坊に向かったが、どこへ行っても「鬼は外」の声とともに豆を投げつけられ、追いまくられて逃げ出す。雨の降る信貴山の町へ繰り出した鬼たちは、「鬼だぞー」の掛け声とともに一軒一軒を訪問し、鬼が去った後、吉祥天女が福豆を家々に配っていった。
かつては玄関先までの訪問だったが、近年は鬼が家の中にも乗り込んでくるようになったという。子どもたちは友だちの家に集合し、怖くないようにと大人数で鬼に応対したが、「悪い子はいないか」「鬼が島に連れて行くぞ」と大声を上げる鬼たちにおっかなびっくり。小学2年生の男子児童は「今年は初めて捕まって、抱え上げられて怖かった」と興奮気味に話していた。
ある訪問先では、子どもに対し「悪いことはしていないか。お父さんから携帯の電話代がかさんでいると噂を聞いているぞ」と改善を促す場面もあり、近所の事情もよく知っている様子の鬼たちは、大暴れしながらもどこか優しい雰囲気。
怖いイメージのある鬼だが、記念撮影に応じたり、犬をなでたり、小さな子どもに「お母さんの言うことちゃんと聞いてね」と呼びかけるなど、信貴山の優しい鬼たちは地域住民の人気を博している。