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奈良大で企画展「越境する女性作家たち」 戦前に「外地」へ渡った女性作家の著作一堂に

展示書物

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 奈良大学図書館(奈良市山陵町、TEL 0742-44-1251)は現在、戦前に外地へ渡った女性作家たちの著作を展示紹介する企画展「越境する女性作家たち-内地から外地、そして戦前から戦後へ-」を開催している。

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 一般的な文学史ではあまり取り上げられることがなかった作家にもスポットを当てたのが特徴。当時の日本が支配下においた台湾・朝鮮や満洲、中国、樺太と、委任統治領だった南洋などの地域「外地」で、女性作家たちが体験や戦争にどのように向き合ったのかを、著作を中心に概観し、ゆかりの深い作家と著作を紹介する。本はショーケースでの展示のみで閲覧などは不可。

 夫である詩人の金子光晴と共に外地を旅した森三千代、軍の報道部員として戦地に赴いた林芙美子や吉屋信子、植民地朝鮮で育てられ獄中手記を記した金子文子、満洲で活動した牛島春子などの22作品と関連資料を展示する。

 企画・監修した、文学部国文学科・光石亜由美教授は「同科の木田隆文教授が上海で活動していた日本人作家の研究をしており観点が重なり、史学科の先生にも貴重な資料を提供いただき実現した。今回取り上げた作家たちは戦前戦中に父や夫の仕事の都合や旅行など、さまざまなケースで外地へ行っている。その体験を戦後いかに作品にしたのかも感じられる内容」と話す。

 台湾のコーナーでは、文学部史学科の森田憲司名誉教授より資料提供された「七娘媽生(ちつにうまあしい)」が展示されている。著者は、日本統治時代の台湾で台湾人として日本語教育を受け、戦後、日本人として帰化した黄氏鳳姿(こうしほうし)。発行所は、台湾日本語文壇の中心人物だった西川満の個人出版社「日孝山房」。意匠を凝らした出版物を刊行したことで知られ、同書も西川自らが装本したもの。エキゾチックな台湾のデザインも見どころの一つ。

 朝鮮のコーナーの「川上喜久子」は父が役人で、幼い頃一緒に朝鮮に渡った。1940(昭和15)年発行の「滅亡の門」は、文学界賞を受賞し芥川賞候補にもなった作品。「京城で新聞記者をしている『僕』は…」というように、内地にいる「君」に宛て手紙を書くという形式で書かれ、男性の語りになっている。装幀は戦後「原爆の図」を夫・丸木位里と共に手掛けた赤松俊子。

 「当時の生活や戦争を女性たちはどのように捉えたのかを知ることができる。文学史にはあまり登場しない作家もいるので新たに知ってほしい」と光石教授。

 特別コーナーでは同館蔵北村信昭コレクションの中から、南洋パラオに関する資料を展示する。

 開催時間は9時~16時30分(土曜は12時まで)。日曜・祝日休館。入場無料。3月23日まで。

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